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市販の内臓脂肪減少薬「アライ」について

[2024.04.09]

4/8(月)より、大正製薬から内臓脂肪減少薬「アライ」の販売が始まっています。
多くの方々が非常に期待を寄せている薬かと思いますが、この薬は医師が処方する薬ではなく薬局で購入する医薬品となりますので、ご注意ください。また、要指導医薬品のため、薬剤師の方がいる薬局・薬店のみで購入できる製品です。

 

大正製薬のホームページより

使用については様々な制限があります。
糖尿病や高血圧症など肥満症(肥満によって健康障害が生じている状態)の方は使用できず、あくまで「腹囲が大きめの方」の薬になります。また使用する際には、食事・運動など生活習慣の改善に取り組んでいることが前提となります。
詳細は大正製薬のサイトをご覧ください。

国内での臨床試験では「内臓脂肪の減少」や「腹囲の減少」効果が示されており、海外のメタ解析(いくつかの臨床試験をまとめて解析したもの)でも体重減少効果が示されていますが、あくまで「食事・運動療法をちゃんと行った方がアライを使うと、より大きな体重減少効果が得られた」という結果でした(論文はこちら)。
具体的には、アライの使用を1年間続けた後の体重減少は、使わずにダイエットを頑張った方々では-6.1kgであったのに対し、アライを併用した方々では-10.3kgであった、というものです。飲んだだけで大幅に痩せる、というものではないと考えてよいと思います。漢方の防風通聖散と似ていますね。


作用機序も「食事から摂取した脂肪の25%を便から排出する」というものですので、例えば1日2000kcalの食事をとった場合、一般的に20~25%が脂肪ですので100~125kcalのカロリー吸収を妨げるということになります。脂肪1kgが7000kcalですから、これは1か月にすると-0.5kg程度の体重減少効果にとどまり、アライのために1か月分90カプセルで8,800円を支払わなくても、ちょっと食事療法や運動療法を頑張れば達成できる効果ではないか、と思われます。

また、見過ごせない副作用が「オナラをすると便が漏れる」「自分も気づかないうちに肛門から油が出る」というものです。大正製薬の製品サイトにも「便漏れパットで対策しましょう」と記載されていますが、そこまでして使う薬かどうか、いうことになります。
また、海外ではアライの使用によって脂溶性ビタミンの吸収が低下する可能性があり、治療中は標準的な複数のビタミンを毎日補充することが推奨されています。ほか、どの薬やサプリメントでも起こりうることですが、100人中1~2人に肝機能障害を起こすリスクがあります。

医者に頼らない「セルフメディケーション」という観点は、メタボリックシンドロームの治療にとってとても大事ですが、アライに過度な期待は持たず、やっぱりまずは地道に食事・運動療法を行う必要があるでしょう。

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