メニュー

漢方内科

漢方内科について

漢方医学は中国の伝統医療ですが、日本には6世紀ごろに伝来したと言われています。基本的な理論や使用する生薬は共通しますが、診断方法や処方については日本独自の進歩を遂げています。日本で保険適応となっている漢方薬は製法が標準化されており、ときには西洋医学的な使い方もされます。

わたしの父である前院長はかつて日本東洋医学会の専門医で、わたしも子どもの頃に漢方薬で治療されたことがあり、漢方治療には昔から馴染みがありました。自分が医師となってからも、なかなか西洋医学のみでは取り切れない症状が、漢方治療の併用によって改善する例を経験してきました。あくまで現代医学の治療の基本は西洋医学ですが、お悩みの症状があれば治療の1つの選択肢として漢方薬をぜひ使ってみてください。

診断

西洋医学と同様に問診や身体診察を行いますが、漢方独特の診察法として「舌診」があります。また脈の測り方(脈診)や腹部の見方(腹診)において、漢方医学的な視点からの診察が行われます。ほかに漢方独特の概念として「虚実」「瘀血(お血)」「水毒」や「気・血・水」といった概念があります。例えば風邪薬においても、「虚証」向きの方への漢方処方と「実証」向きの方への処方は異なりますし、お年寄りで全身の皮膚が乾燥しているような方は「血虚」ととらえて補血剤の処方を行います。このように、漢方薬による治療は各々の患者さんの特徴に応じて行われるため、一種のオーダーメイド治療と言えます。

一方、漢方薬を西洋医学的なエビデンスに基づき解析する試みも進んでいます。

  • 認知症の周辺症状に対する抑肝散
  • 機能性ディスペプシア(検査では異常がないのに胃もたれや胃痛が続く状態)に対する六君子湯
  • 腹部手術後の腸閉塞予防のための大建中湯

などは高いエビデンスレベルで効果が示されており、西洋薬に近い感覚で処方ができる漢方薬です。

男性更年期障害に対する漢方薬

「男性の性腺機能低下症ガイドライン2022(日本内分泌学会、日本メンズヘルス医学会 編集)」では、男性更年期障害(LOH症候群)の改善が期待できる漢方薬として柴胡加竜骨牡蛎湯補中益気湯が挙げられています。ただしその効果を調べるために行われた臨床試験は小規模で、今後の研究の進歩が待たれるところです。

気・血・水バランスチェック

漢方治療ご希望で来院ご予定の方や、市販薬の漢方薬をご購入予定の方はこちらのサイトでご自身の「証」をご確認いただくと、どのタイプの漢方薬ご自身の体質に合うかよくお分かりになると思います。ぜひお試しください。下記のアプリからでもご覧になれます。

漢方薬の注意点

当院は漢方内科を標榜していますが、西洋医学と漢方と比較すると、科学的根拠では西洋医学に圧倒的に分があります。とくに糖尿病・高血圧・慢性肝炎や感染症といった薬物療法が進歩している領域では、漢方薬の出番は少ないです。冷え性や肩こりなど漢方薬での治療が有効な病態はたくさんありますが、まず西洋医学できちんと治療を受けましょう。

また漢方薬は西洋薬より副作用が少ないと言われますが、実際には漢方薬でも西洋薬と同様に様々な副作用が起こり得ます。生薬の柴胡(さいこ)や黄芩(おうごん)を含むものは肝障害や間質性肺炎といったアレルギー反応が報告されており、定期的な血液検査や胸部X線検査が必要です。また多くの漢方製剤に含まれる甘草(かんぞう)は「偽性アルドステロン症」といって高血圧やむくみ、低カリウム血症を起こすことがあり、最も頻度の多い副作用です。このように「漢方薬だから安全」というわけではありません。ただ、適切に使えば問題になることは少ないです。

インターネットでは「肥満に効く漢方薬」を謳っているものが見られますが、それらにも注意が必要です。肥満に頻用される漢方薬には大柴胡湯、防風通聖散、防已黄耆湯があり、後ろの2剤は添付文書上「肥満症」に適応があります。しかし大柴胡湯、防已黄耆湯については痩せるという科学的根拠は強くありません。防風通聖散(市販薬としてナイシトールやコッコアポのように、漢方薬ではないかのような名前で販売されています)は確かに7つの論文をメタ解析した結果でBMI(肥満指数)の低下が認められましたが、その効果はわずかでした。また一般の方々が期待している「ウエストを減らす効果」は認められませんでした。過去には大幅な体重減少を示した論文もありましたが、それは厳しい食事・運動療法を併用した上でのことで、少なくとも防風通聖散を飲むだけで数キロも痩せる、ということは残念ながらありません。

また防風通聖散は実証(体力の充実した人)向きの漢方で、下剤に使用する大黄(だいおう)や芒硝(ぼうしょう)、交感神経刺激作用を持つ麻黄(まおう)が含まれているため、胃腸の弱い方には不向きです。先ほど述べた副作用リスクの高い生薬である黄芩や甘草も含んでいます。また山梔子(さんしし)は5~10年以上継続すると腹痛や下痢、便秘を起こす「腸間膜静脈硬化症」を引き起こし得るため、防風通聖散は長い年月内服できる漢方薬でもありません。

肥満に対しての薬物療法は近年最近ようやくGLP-1作動薬など臨床的効果のあるものが出てきたばかりで、まだまだ患者さん自身の努力(食事・運動療法)が必須な発展途上の分野です。今後の治療の進歩に期待しましょう。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME